目を覚ましたのは昼すぎだったろうか。
オレはメシも取らずにメトロに乗り
『Denfert-Rochereau』なる駅を降り
そして駅近の小さな公園へとたどり着いた。
昨晩ピエールが「オススメの場所を思い出したぞ!」と
唐突に教えてくれた場所だ。
そしてその公園にはとんでもない行列ができていた。
前に並ぶ人の話では一時間は待たないといけないらしい。
むろん、この小さな公園には誰も興味はない。
オレはその先にある・・・そうカタコンベに行くのだ!
カタコンベ。それは集団墓地のことだ。
「ほう!のび太ごときに死者を弔う真摯な心があったのか!」
「うーむ、感心感心!」
そう思われただろうか?
もちろん、そんなものない。
いやちょい待ち!
ち、ちがうんスよ!は、話せばわかる!
あのね、調べたんスけどね?
もともとココってただの採石場だったんスよね。
でも18世紀ごろかな?
当時パリって街中に墓場があったらしいんすけど
「墓多すぎ!これじゃあ再開発できねえじゃん!」ってえらい人が超困っちゃって
「せや!採石場に骨を放り込めばええんや!ほたら墓なんかいらんやん!」
ってのが始まりの場所なんスよ?ここ。
そんでできたカタコンベだけど
「骨がいっぱいあんの?うわぁw退廃的!!それ見たぁい!」って
性的にゆがんでてサイコパスそうな貴族達の遊び場になったりして
現代になってもなお、
そんな見世物小屋的ポジションを引き継いだままな
観光客ウェルカムな場所なんすよ。
わかります?
死者に対する敬虔な気持ちなんてスタートからゼロなんすよ。
いやぁ白人ってその辺り悪趣味っすよ?
だって確認してみてくださいよ。
並んでる客、白人ばっかりじゃないすか。
あの中国人団体がまったくいないっすわ・・・
まぁその中にワクワクしながら並んでる
のび太的な存在もあるわけなんすけど・・・
さてムダに長い余談と行列を終えカタコンベに入ろう。
狭くて深い螺旋階段をカツンカツンと足音を反響させ降りていく。
確かにこんな狭い階段しかないんじゃ
待たされるのも無理はない。
そして降りた先には狭い地下道が続く。
なかなか退廃的でステキだ。
そして歩を進めると
「Arrête! C’est ici l’empire de la Mort」
(止まれ!ここは死の帝国である)との注意書きがある。

むろん、のび太はフランス語なぞ読めないので
躊躇なく突破を敢行する。
すると、さっそく骨になったパリっ子たちのお出迎えだ。
うわぁ・・・
通路は骨で補強されてたり、
頭蓋骨をアーティスチックに配置していたりと
無駄に芸術ポイントが高い。
<パリのアーティスト魂はいつも間違っている>
なんというか・・・
さすがヒネくれピエールおすすめスポットである。
ボクこんなの大好きなんだよ!
アイツ本当に俺のことわかってんなぁ!
そんな地獄絵図的というか耽美的な退廃をゆっくりと楽しむ。
『骨だなんて怖い!呪われちゃう!』
そう思われる方もいらっしゃるかもしれないが
ここまで骨だらけなら、恐怖を感じるどころか

と、開けてはならんゆがんだフタを開けている自分に
気づいてしまうことになるかもしれない。
個人的には是非行ってほしい
そんなパリのオススメスポットである。
そして深い地下帝国を存分に堪能し、
オレは地上へと脱出した。
太陽がまぶしすぎたので
オレはマクドナルドへと逃げ込み
ついでにセットメニューを注文した。
愛想の良いマクドナルドの店員が
「ナゲットのソースですがー」
「マスタードとキュレィがありますけど、どうしますー?」
と聞いてくる。
キュレィ?キューリのことだろうか?
なんかわからんが、ソレにします!
・・・出てきたソースはカレー味であった。
インドの呪いやろか・・・
この旅に一抹の不安を感じながら
オレは世界共通のすわり心地の悪いイスに腰をかけた。
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